2014年7月22日火曜日

第13回 論文輪読(その4)

Inappropriate Documentation Capture:不適切な文書の取り込み

EHRシステムベンダはしばしば文書 化を支援する機能を加える。たとえばコピー&ペースト、テンプレート、標準的なフレーズやパラグラフの使用、そして自動的なオブジェクトの挿入などであ る。オブジェクトの挿入の例としては、電子記録の別の部分から取り込まれた臨床的な値(clinical values)である。これらの特徴の恩恵は、データ入力の効率向上、瞬時性と視認性(読みやすさ)、そして、文書の一貫性と完全性である。しかしなが ら、適切な教育や管理なしに不適切に利用されると、これらの特徴は不適切な文書化に成り得るし、医療過誤あるいは詐欺疑惑(allegation fraud)という結果になる可能性がある。コピー/ペースト機能やテンプレートに関連するエラー(これらについては以下でより詳しく述べる)は、不適切 なデータ入力に関連するもっともよくあるEHRのリスクの代表的な2つである。不適切なデータ入力によってもたらされるユーザ関連エラーのそのほかのタイ プは付録Aに記載した。

Appendix A

EHRのユーザ関連のエラー
  • データ入力エラー
    •  経過記録や処方一覧を入力するためにマウスやキーボードを使っている医師、看護師、そして技師たちは、ときとしてデータ入力で間違えるかもしれない。その結果、不正確なデータ、量、バイタルサインといった結果に陥るかもしれない。
  • カット&ペーストエラー
    • EHRシステムの中にはユーザが以前のノートから詳細をカット&ペーストすることを許しているものがある。 実際には古いノートに書かれた臨床状況や所見、そして治療は既に適切ではないにもかかわらず、臨床状況が変わっていないという前提の下で、叙述部分が使わ れる(bring forward)ことがある。このようにして作られたノートは間違った、あるいは控えめに言っても不正確なデータを含んでおり、正しくない意思決定をして しまうかもしれない。
  • カルテ管理エラー
    • 患者が受診する前から診療記録を書き始めている場合がある。もし、患者が約束をすっぽかしたら、通常の場合、これらのノートは後に削除される。しかしながら、受診前に作られたノートを削除するとき、実際に受診したときのノートが間違って消されてしまうかもしれない。
  • カルテ完成エラー
    • ある医師がカルテのノートを完成させることができずサインもしていないとき、別の医師が後に同じ患者を診て、新規受診の詳細をつづった未完成ノートを間違って完成させてしまう。
  • オーダエントリエラー
    • コンピュータベースのオーダエントリシステムを特色とするEHRシステムは、たいてい、医師が処方名を、一覧あるいはマスターデータベースから選 択させるようになっている。新しい薬の中にはまだデータベースに登録されていないものがあるので、システムの中には利用者が一覧にない薬品名をデータベー スに入力してそれらのオーダーを入力したり処方箋を発行したりできるようにしてあるものがある。もし、ある医師が新薬の正しいスペルを知らなかったら、彼 あるいは彼女は間違った名前を入力するかもしれない。時間が過ぎ、間違ったエントリがデータベースを埋めると、他のユーザも、スペルを間違えた、本当の薬 とよく似た発音のバージョンをクリックして、間違った処方を行うかもしれない。

退役軍人健康庁のEHRシステムに記録された記録に関する研究で、経過記録の84パーセントは少なくとも1つの文 書エラーを含んでおり、1患者あたり平均で7.8個の文書エラーがあることが見つかった。エラーの種類は、コピーされたテキスト、不完全なあるいは不正確 なテンプレート、違う患者に入力された医療記録、矛盾のあるテキスト、そして失効した(期限が過ぎた)まま埋め込まれたオブジェクトなどである。この研究 は10年前に発表されたものであるが、より最近の研究もこれらの発見と一致している。最近の文献は、EHR関連の間違いの広まりに関しては、ほとんどある いはまったく改善がないことを示唆している。このことは、さほど不思議でもない。なぜならば、それらの根本的な原因を特定し、対処することがほとんど行わ れていないからである。さらに、EHRに伴うエラーから引き起こされる患者への危害は認識も報告もされていないようであるからだ。

Copy/Paste: コピー/ペースト

同じ診療日だけでなく以前の診療日の診療記録の様々な場所からのテキストのコピーペースト(cloning、copying forward, carrying forwardとも呼ばれる)の増加は、EHRにおいて深刻な問題である。そして、この問題は、EHRの利用が拡大するにつれて悪化している。copy/paste機能の不適切な使用に由来する文書の完全性へのリスクには次のものがある。
  • 正確でない、あるいは期限切れの情報
  • 現在の情報を一意に識別することをできなくする冗長な情報
  • その文書が最初にいつ作られたかを特定できなくする
  • 間違った情報の広まり(伝搬)
  • 内部的に矛盾した経過記録
  • 不必要に長い経過記録
最終的に、 健康記録の信頼性や完全性は損なわれ、患者への危害は現実的なものとなる。たとえば、医療研究品質庁(Agency for Healthcare Research and Quality's)のwebM&M(morbidity and mortality rounds on the web)に公開されていたケースでは、コピーペーストされたテキストが静脈の血栓塞栓症を防ぐためのヘパリン投与の失敗を引き起こし、その結果、患者は肺塞栓症で再入院するに至った。別の報告では、患者の膿瘍が排出されたという事実を反映するようにノート(経過記録)が更新されていなかったので、同じノート(経過記録)を立て続けに何日間かコピーしたことが、患者への抗生物質投与計画を危うく無駄に変更するところだった。
文書が簡単にコピー&ペーストできるため、EHRは、しばしば、冗長な、あるいは、関係のない情報で溢れかえり、その結果、記録を読んだり重要な詳細の場所を探す(見つける)ことが難しいという臨床家の不満を引き起こす結果となった。ひとたび、EHRが、構造化されていない、無関係な、あるいは誤りのあるデータの巨大な倉庫になってしまうと、患者の物語と患者の病歴(叙述)はもはや読むのは簡単ではなく、そのことが医療過誤訴訟と同様に臨床意思決定に対する影響を持つ。
EHRにおけるコピー&ペーストの広がりに関する最近の研究は、この行為は常態化しているという初期の研究を支持している。2013にCritical Care Medicineに発表された研究では、ICUのEHRにおいて、研修医の経過記録の82パーセント、主治医のノートの74パーセントが20パーセント以上のコピーテキストを含んでいたと報告している。2010年にJAMIAで発表された別の研究では、署名している記録の78パーセント、経過記録の54パーセントがコピーテキストを含んでいると報告している。2008年に実施された、2つの大学病院における医師に対する調査では、医者の90パーセントが日々の電子経過記録でコピー/ペースト機能を使っており、71パーセントがコピーペーストされた記録には矛盾したり期限切れになったりした情報がより当たり前になったと感じていた。
不適切にコピーペーストされたテキストは即座には検出されないかもしれない。たとえば、Hussain v. Principi(ある雇用差別訴訟事件)では、ある医師が、他の医師のアセスメントを、その医師がその患者を治療の前、あるいは、治療中、あるいは治療後に、実際に診ていたという根拠なしに、コピー&ペーストするパターンが、医師が患者の診察を行うところを密着してモニタリングしない限り見つけることはできなかった。

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